急がばしゃがめ

コンクリートジャングルで合成樹脂のささやきに耳を澄ませては目を回す。人文系だけど高分子材料でご飯食べてます。。SF読んだり、ボードゲームに遊ばれたり。一児の父。

新型コロナと再生プラスチック市場の話

たまには業界の人間として時事に絡んだプラスチックの話題でも。

 

米国の再生プラスチック市場がコロナ禍で壊滅的な打撃を受けているという話。

https://wired.jp/2020/05/02/coronavirus-pandemic-recycling-crisis/

 

直接的にはこのコロナ禍で再生業者が事業休止していることが大きいですが、そもそも米国再生材市場が以下の3要因で落ちていたところに致命的な一撃がきている、と。弱り目にたたり目って感じですね。

 

①石油価格の下落

 →原油先物価格がマイナスになったとセンセーショナルに報じられたりしてましたが、再生材使用メリットは第一に価格。バージン材の価格が下がれば自ずと再生材の価格も下がる、と。

 

②中国の再生材輸入制限

 →中国がこれまで大量に買ってくれていた再生材の輸入を18年になって禁止にした、と。これにより最大の需要地を失って再生材がだぶついて市況が落ちている…これは何も米国市場に限らない話で日本でもそういう話は再生材を扱ってない僕でもしばしば耳にしました。※なんかベトナムを経由させるルートがあるとかないとか。

 

③再生材の質の低下

 →これは要はPETボトルが薄くなったりっていう話ですね。使用量を減らせばコストも下がる、と。簡単に握りつぶせるPETボトルとして世にポジティブに売り出したのはいろはすだったと記憶していますが…当のいろはすはこの3月に再生材比率100%にしたみたいですね。いろいろ大丈夫なのか。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56317980T00C20A3XQH000/

 

このところマイクロプラスチックの問題とかでプラスチック容器の使用自体が抑制されて、再生材の供給自体減ってるとかいう話もありましたが、コロナ禍でテイクアウト特需?で(工業製品とかは壊滅的打撃だとしても)容器関連の樹脂業界は潤ってるのかと思っていましたが、こんな落とし穴があったとは。

 

中国の有象無象的な再生材市場はともかく、日本の樹脂業界でも再生材(主に安定した数量・品質を確保しやすいPET、PC)を一定量使用した再生グレードというものがあるわけですが、この辺も供給難に陥りますね。こういった再生グレードの主要顧客はOAメーカーだと聞きますが、この辺は供給確保できるんでしょうか。。。

※欧州の環境規制で製品筐体の一定量(半分以上とかでしたっけ?)を環境負荷の低い原料(再生材とか植物由来樹脂)を使う必要がある。PLAとかの植物由来樹脂はコストが高いクセに物性も加工性も著しく悪いので、再生材を使うというのが合理的選択になりがち。

 

まあ樹脂に限らず再生PETを使ったポリエステル繊維の縫製品とかもりますし。

世の中どうなっていくんでしょうか。