急がばしゃがめ

コンクリートジャングルで合成樹脂のささやきに耳を澄ませては目を回す。人文系だけど高分子材料でご飯食べてます。。SF読んだり、ボードゲームに遊ばれたり。一児の父。

”急がばしゃがめ" 解題的ななにか

いつの間にかブログタイトルを「急がばしゃがめ」に変えていました。

(自分でもいつ変えたのか覚えていない。もう1年になるだろうか?)

解題というほどでもないですが、例によって解説というか弁解がてらあれやこれやを。

 

言わずもがなですが、ことわざ「急がば回れ」をもじったもの。

この機にこのことわざの語源を調べてみたところ、室町時代連歌師・宗長による「武士(もののふ)のやばせの舟は早くとも急がばまわれ瀬田の長橋」という和歌に由来するのだと。琵琶湖を渡るには、現在の草津市にあった矢橋の渡し船を利用するよりも、瀬田の唐橋を使ったほうが結果的に早く目的地に着くのだとまあことわざそのものですね(そりゃそうか)。

この渡し船というのは比叡山から吹き下ろす風(比叡おろし)によってわりと危険な航路だったという。当の連歌はこの事実が周知されていることを前提に「わかるー」「琵琶湖あるあるだね」みたいな共感を呼んだのでしょうか。

連歌には明るくないのですが、連歌というと通常は誰かが詠んだ上の句を受けて他の誰かが下の句を詠むものと理解しているんですが、実際はこういうあるあるネタのネタフリ(上の句)→(文脈を捉えた)適切な返し(下の句)というインタラクションを楽しむものなんでしょうか。

連歌と言わずとも、和歌とか短歌とかいうとかまえちゃうけどこういう?あるあるネタを三十一文字で垂れ流し続ける歌会、というのなら気軽に楽しめそうな。

参照1:https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000132194

参照2:http://gogen-allguide.com/i/isogabamaware.html

 

ここまで脱線しましたが、解題に戻りまして後半部の「しゃがめ」。

「しゃがむ」というのはボードゲーム用語というかボードゲーマーが使うスラングで単に「(通常であれば)行ったほうが有利とされる行動を手番中に実行しない」より積極的には「実行するのに必要な条件が揃っている行動を”あえて”実行しないで手番を終える」というのがわりと穏当な語釈でしょう。

特に後者の文脈においては、ボードゲームは基本的に同卓している他のプレイヤーに対して勝つことを目的としているのであれば、字義通りの意味でその言葉を発するのは相手を不用意に警戒させることになるので合目的的とは言い難い。

どちらかというとこの「しゃがむ」というのは有効打を打ちようにも打てない局面において(白々しくもあえて)「ここはしゃがんでおくか」などともったいぶってみせることによって1)他プレイヤーを惑わせる、2)白々しい負け惜しみによって若干だけ場を和ませるといった効果が期待できる(かもしれない)。

実用面では、先行プレイヤーに資源を枯らされるなどしてあまりいい動きができない時や生産的とは言い難い不毛な労働を強いられている時に「い、いまはしゃがんでいるだけだから」と自分に言い聞かせることによって、少しだけ前向きに励める気持ちが湧く…そんな気がしたんです。

 

ということで「急がばしゃがめ」というのはなにか含蓄があるようで特にそれらしいものはないものとして、いかにもこのブログらしいものであるということで。