急がばしゃがめ

コンクリートジャングルで合成樹脂のささやきに耳を澄ませては目を回す。人文系だけど高分子材料でご飯食べてます。。SF読んだり、ボードゲームに遊ばれたり。一児の父。

ウイングスパン オセアニア拡張(大洋の翼)にみるゲームデザイン

今月初に日本語版が発売されたウイングスパンの拡張第2弾、大洋の翼を先日ようやくプレイ。

基本は北米大陸、拡張第1弾はヨーロッパ、そしてこの拡張第2弾ではオセアニアに棲息・分布する鳥たちがカードとして登場。

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ヨーロッパ拡張では鳥カードや目的カードの追加と基本の延長上、新要素もラウンド終了時能力くらいでプレイ感は大きく変わらない…オセアニア拡張もそんな感じなのかと思いきや、「花蜜」という新たなエサ種の追加を基軸にプレイボードも新調され、となかなかに派手な変更が。

ドイツ年間ゲーム大賞を受賞するなど十分に成功しており、ヨーロッパ拡張も評価高いのになぜこんな冒険をするのか…と思っていたのですが、版元であるストーンマイヤー社の社長のジェイミーの発売記念コメント動画をみて得心がいった次第。

こちらの動画。字幕つきで9分くらいなのでぜひ一度ご覧いただきたい。


『ウイングスパン拡張:大洋の翼』 その魅力(日本語字幕付き)

 

この動画の冒頭でも言及されていますが、これまでのウイングスパンでは圧倒的に卵プレイ=草原を主軸としたプレイが強かった。単純に卵1個で1点なので他のレーンを軸にプレイするよりもはるかに点数を伸ばしやすい。さらに意識的に草原に起動時能力で得点力の高いカードを揃えておけば、終盤には鳥カードをプレイするよりも草原で産卵アクションを打つほうが点数が伸びるのもしばしば。

ウイングスパンは鳥たちの生態的特徴を丁寧かつ効果的にゲームシステムに落とし込みつつ、それでいて優れたゲーム性・ゲームバランスを有しているところが高く評価されているわけですが、制作陣はそこに飽き足りなかった。

やはり鳥のボードゲームである以上、プレイヤーが産卵アクションするばかりよりも、鳥カードをたくさんプレイする姿が好ましい、よりゲームのコンセプトにマッチしているだろう。

ということで「プレイヤーたちが鳥カードをたくさんプレイする」ことを促すような大掛かりな調整がこのオセアニア拡張で試みられている。

 

目立った変更点というか新要素としては花蜜=ワイルドとして使えるエサ。プレイしてみるとこれがわりと潤沢に手に入ることがわかる。6面ダイスのうち2面(従来の麦のみの目と果実の目がそれぞれ麦/花蜜のと果実/花蜜になった)で出るだけでなく、オーストラリア拡張の鳥カードの能力ではわりと蜜をばらまく能力が多い。

さらに、新しくなった個人ボード。草原の卵アクションが弱体化しているというのが最も直接的な卵プレイ抑制策ではあるけれど、地味に森林アクションが強化されている点にも注目したい。さらに、鳥カードの中には起動時能力で同列に鳥カードをプレイできるものやプレイ時能力で同列に鳥カードを続けてコストを割引いてプレイできるものなどが入った。

ヨーロッパ拡張の時点でラウンド終了時能力で鳥カードをプレイできるものが追加されているが、オセアニアではさらにゲーム終了時能力で鳥カードを追加でプレイできるものもある。

ジェイミー氏のコメントにあるように、制作サイドはプレイヤーにどのようなゲーム体験を提供したいのか、というところからゲームデザインを組み立てているのだなと感動した次第。売れればいいとかゲーム性があればいいとかではないのだなと。

 

ちなみにこの売上の一部がオーストラリアの森林火災の義援金に充てられるというところも含めてほんとにいいゲームだな、と。

 

いろいろ持ち上げていますが、ウイングスパンをそれなりにやり込んでいる身としては感じ入るところのあるこのオセアニア拡張のアレンジコンセプトであるけれど、やはり考えるべき要素が増えて長考しがちになって全体的にもっさりする印象も拭えない。花蜜消費マジョリティとかプレイ時間が長くなってしまうのは避けられない。

 

まあでもこの花蜜のプレイ感とかを一度体験してしまうともう戻せなくはなってしまうんですが。

オセアニア拡張を2度プレイした感じでは兎にも角にも森林プレイ、とりあえず森林に5枚揃えるってのが強いかな。少なくとも草原プレイに走るよりは。知らない鳥カードがいっぱいあるのは楽しいですね。コロナ禍にあってはなかなか研究進まなそうですが。デジタル版に基本だけでなく、拡張が一日も早く追加されることを願うばかり…

 

それにしても、オセアニア拡張のモモイロインコ強くないですか。これまで起動時能力単体で2点生み出すには、カードを一枚差し込んだそのカードに卵1個産めるとか全プレイヤーが特定の巣の鳥カード1枚に卵1個産み、起動したプレイヤーのみ2枚に置けるとかそれなりにコストや卵マネジメントや利敵要素が強かった。それに対してこいつは麦を得るチャンスを他プレイヤー一人に与えるだけでコスト消費なく2点得られるというのが強い。

 

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もっとウイングスパンを遊びたいです…