急がばしゃがめ

コンクリートジャングルで合成樹脂のささやきに耳を澄ませては目を回す。人文系だけど高分子材料でご飯食べてます。。SF読んだり、ボードゲームに遊ばれたり。一児の父。

えんどろーる

2019年1月から放送されていた「えんどろ~!」が7月からサンテレビで再放送されるとか。なぜこのタイミングで?という感もありますが。

不意に懐かしくなりつつ、放送時から1年強、寝かせておいたものに突き動かされるままに書いています。

 

監督がゆゆ式のかおり、キャラ原案がなもりで制作はStudio5組と来たら勝利を約束された、とまでは言い過ぎかもしれませんがその手の人にはこれは間違いないと期待せずにはいられない布陣。

 

しかしながら、結果的には商業的にはあまり振るわなかったわけですし、僕個人としても東京砂漠の単身赴任生活の干からびた心に潤い、救いをもたしてくれるのではないか、という期待に応えてくれるものではなかったというところではあるのですが、それでも凡百の深夜アニメの中でも放送終了後に時をおいてこうして何かを書かせるくらいには僕の心を捉えた作品ではあったわけです。

 

えんどろ~というタイトルは「エンドロール」から来ていると思われる。

これは作品を見ていけばわかるのだけれど、二重の意味をもたされている。

ひとつはシンプルに終幕としてのエンドロール。

この物語は冒頭でRPG的世界観で勇者一行が魔王を倒すところからはじまる。つまり、この物語は終幕後の世界として提示されているわけです。これが表面的なエンドロール。

そして、物語の筋書きとしては魔王との最終決戦において勇者らが放った魔法が暴走して勇者一行と魔王は過去に飛ばされてしまう。この時魔王だけがそれまでの記憶を保持しており、勇者はまだ勇者になる前の状態。魔王はここで自身の破滅をもたらす勇者が勇者にならないよう画策するが、物語の途上で諦めてしまう。すなわち、それまで囚われていた魔王という役割(role)を放棄する。これこそがもう1つのエンドロール。

この作品では魔王という役割に忠実たらんとする魔王に対し、とにかく各々の欲望に忠実で自由奔放な勇者一行が対比的に描かれる(そのへんが本作におけるギャグ展開の主軸になるわけですが)。

紆余曲折を経ながらも主人公ら勇者はそれが運命であるかのように避けがたく再び勇者となり、そして魔王は一度は放棄して魔王という役割を再度引き受けることになる。

最終的にどうなるかは作品を最後までみていただければと思うけれど、まさにエンドロールなわけで。

本作では主人公らはRPGにおける職業を冠した命名になっていて、例えば主人公:職業勇者の愛称はユーシャ、聖者はセイラ、戦士はファイ、魔法使いはメイ。また魔王もマオとなっている。

つまり、職業=役割と人格が本質的に個人と結びついてる世界として描かれていて、勇者一行と魔王が対峙するという終局は宿命として避けがたいものとして描かれる。

そこにおいて主体的に意志で以て役割を放棄する=エンドロールするってところが尊い

 

当時この作品が僕の心を捕らまえてしまったのは、企業という組織の歯車として会社に言われるがままに単身赴任までして働いている現実、全人格労働とまではいかなくとも働き方に疑問を懐きながらもなんだかんだで忠実に職務を遂行している自分がなによりもその役割の放棄し難さに直面しているというのに魔王も勇者もあっさりとエンドロールしてしまうことに歯がゆさを思ったのか、あるいは単に羨望したのか。

 

しかしまあこの作品の設定した主題、役割の放棄ってのがテイスト(美少女動物園ソフト百合)になじまなかったのか。はたまた単にこのような社会や集団からの役割期待を放棄してみせるという主題が想定した視聴者層に受け容れられなかったのか…

 

いまはだいぶ僕自身の状況も変わっていていくばくか冷静に視聴できる気がするのでサンテレビの再放送をじっくり追いかけながらまたゆっくり考えてみたい。

 

そうそう、えんどろ~!といえば、ホビージャパンからえんどろ~!のボードゲーム(カードゲーム)が発売していました。当時もほとんど話題にならなかったし、僕の観測範囲でも買ったとかやったとかそういう話は聞きませんでしたね…作中のコア設定である武器や魔法を使う際に用いるカルタードをモチーフにしていますが、どんなルールだったんでしょうか。ホビージャパン公式にはトランプとしても使えるとあるのでわりと迷走してる感。まあこういうメディアミックス系ボードゲームは概して中途半端な感じになりがちですよね…

 

いまwikiをみると、ホビージャパンはえんどろ~!の製作委員会に参加してたんですね。なるほど。ときにホビージャパンはこれ以降アニメコラボのボードゲームを出していないようなのですが、それは…えんどろ~!が真に終わらせたのはホビージャパンのメディアミック系スボードゲーム、とならないことを願います。