大阪万博の「ｼﾃ....ｺﾛｼﾃ......」なロゴと河森的変形メカ

大阪万博のロゴが発表されましたね。

多くの人が思ったことでしょう。どうしてこうなった。

「いのちの輝き」がテーマということですが、これではまるでマッドサイエンティストが人の道を踏み外した研究の末に生み出された生物のようでは。敵対する主人公たちに「ｼﾃ…ｺﾛｼﾃ……」と呼びかけるお決まりのやつじゃないですか。。。

という通り一遍のツッコミはおいておいてここで触れておきたいんですが、2025年のお大阪万博では10人のプロデューサーが任命されており、そのうちの一人が河森正治なんですね。

http://animationbusiness.info/archives/10021

知ってる方には言わずもがなですが、河森正治といえばマクロスシリーズの監督にしてメカニックデザイナーとして知られる人物ですが、僕が最も好きなアニメ関係者でもあります。

大学生の頃に河森正治に傾倒して、彼の出演するイベントにわりと足繁く通ったものです。もちろんバルキリーといった変形機構や変形に関する美学・哲学的な部分も非常に好きなのですが、彼の魅力のもう一面としては、宮沢賢治の伝記アニメ映画を製作したり、地球少女アルジュナというニューエイジ的感性を全開にした地球環境問題を主題としたアニメ（第一話で原発が臨界事故を起こすとか中盤で地球共鳴能力に目覚めたヒロインがハンバーガーを食べようとしてそこに用いられる化学物質とか生体への危険性を感知してしまい食べられなくなってしまう描写があるとかなかなかぶっ飛んだ作品。この企画が通った理由が謎すぎる）の原作・監督を務めていることからわかるように筋金入りのスピリチュアル系エコロジー思想の信奉者である。(変形、合体的なメカニックデザインとエコロジー思想の両面が統合された創聖のアクエリオンこそ彼の代表作というか最も作家性が発揮されていると言えるのではないだろうか)

彼が信じていることに関しては同意しかねる部分はあるけれど、そういったものへの共感が彼のメカニックデザイナーとしての仕事にも独自性を与えていることは理解できる。

兎にも角にも、僕の理解では、河森正治の思想性というのは（少なくともある時点までは）ホリスティックでスピリチュアルなエコロジー思想なわけで、ふつうに考えればそれは万博を強引に推進するところであるところの維新の会が標榜するような行き過ぎた自助努力、自己責任論に基づく個人主義としての新自由主義/ネオリベラリズム、そして、ネトウヨ的愛国主義こと差別主義とは相容れないものである。

そうでありながら、河森正治が維新案件そのものである万博プロデューサーなる仕事を受けているかといえば、彼が所属し、かつては取締役に名を連ねた（現在は特別顧問）アニメ製作会社サテライトの問題が大きいと考えている。サテライトは今年になってパチンコ大手SANKYOから資本提供を解除されている。サテライトはこれまでSANKYOの潤沢なパチマネーによってアクエリオンやマクロス、戦姫絶唱シンフォギアのシリーズ展開、新作アニメを製作してきたわけですが、近年は正直、パッとした新作がなかったように思う。そんなところでSANKYOにもたらす安定的経済基盤が失われれば経営が危うくなるのは必定というものではないだろうか。

そんなときに河森正治にプロデューサー就任のオファーが（多額の報酬およびそれに付随する映像制作やメカニックデザインの仕事が）あればそれは従業員や取引先等の関係者の生活を守るために魂を売ってでもその仕事を受けようということはあってもおかしくはないだろう。

今回の万博ロゴは各社で物議を醸しているわけだけれど、僕が河森正治ということもあり思い浮かべたのはニルバーシュtype the ENDである。

万博の象徴でもある太陽の塔が突如として変形し、the ENDのようなグロテスクなロボットになって、「溶けちゃえ溶けちゃ脳みそ溶けちゃえ」ってやるやつを見たくないか、といわれればそれはみてみたいよなと。

しかしまあ大阪万博だとかカジノだとか維新はほんと自らの利権に貪欲というか、自らを支持する層に対して手厚く/驚くほどに厚かましく利益誘導行うよな、という感じです。

余談ですが、僕の学生時代に専攻は宗教学だったんですが、卒論テーマを河森正治のエコロジー思想/宗教性とかにしておけばよかったななどと思うわけです。